バックナンバー
七面山別当より別当 小松 祐嗣
苦難に感謝(みのぶ誌2024年1月号より)
 あけましておめでとうございます。本年は辰年でございます。別の言葉で表すと龍。まさに七面大明神様の年であります。辰の字には「ふるう」「ととのう」という様な意味があり、万物が振動し、草木がよく育ち整っていく様を表します。これまでの努力という種が芽吹き、美しい花を咲かせる、そんな一年となりますよう七面山山頂より謹んでご祈念申し上げます。
 さて、七面山ではこれからが一番厳しい時期となります。私が過去七面山で経験した一番の寒さはマイナス19度。今年はこれを超えることがあるのでしょうか?うっかり水道の蛇口を閉めてしまえば一晩で凍りつき、春までその蛇口は使えなくなってしまいます。昔は縁の下に入り込み、水道管にバッテリーを繋ぎ電気を流し、氷を溶かしたことを思い出します。とは言いましても、日本全国にはもっと厳しい冬をお過ごしの方もいらっしゃるわけで、決して七面山だけが特別な訳ではありません。夏になれば暑さがどうだとか、冬になれば寒さがどうだとか、ついつい愚痴が口をついて出てしまうものでございます。よくよく自分の心を観察すれば、あーだこーだと文句ばかり言っていることに気付き、反省させられると共に、私自身の本質を見せられ、あまりの凡庸さに思わず笑えてくるものです。
 記憶にも新しい平成26年の山梨県を襲った雪害時、七面山は2メートル以上の積雪。全県域に孤立集落があった訳ですが、七面山もその一つ。麓までの道を何台もの重機が雪をかき、私達は参道を何往復もして踏み固め、漸く5日をかけて麓までの道が開きました。その夜、七面山に一本の電話がありました。「明日お山に登らせていただきます」という月参りの御信者様からの連絡でした。冬には参拝者も少ない七面山ですが、このタイミングでのご連絡は、大明神様からのご褒美だったのかもしれません。
 有難いとは、難が有ると書きます。日々感謝の心で厳しい冬を乗り越えようと思います。