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育恩の峰より
奥之院思親閣別当 佐藤 順行
生まれ変わりのご修行(みのぶ誌2023年8月号より)

 「何かすっきりするんです。だからまた来たくなるんですよね」お参りに来られる度にこうおっしゃる方がよくおられます。その時は「そう。その通り。よく気が付かれましたね」と言って同じお話をします。
 私達は身延山や七面山に登ってお参り、ご修行をしますが、なぜお山に登るのでしょう。お山にお祀りされるお祖師様や七面大明神様にお参りする為なのは勿論ですが、他にも理由がございます。私達はお参りの時にはお山の参道を使わせて頂きます。実はこの参道には女性の体に備わる赤ちゃんが生まれる通り道の産道、産まれ出でる道の意味もあります。更には私達がお参りさせていただく、そのお山自体が神仏のご神体、身延山ならばお祖師様の、七面山ならば七面大明神様のお体でもあるのです。私達がご修行でお山に登るという事はお祖師様や七面大明神様のお体の中を歩かせて頂くという事。その道中でご神体のお力と私達が口に唱え、心に念ずるお題目のお力で、私達が持つ罪や心の垢、穢れが気づかぬ内に清らかになっていく。そして帰り道にはそのご神体の産道、産まれ出でる道を通り、心と体が清らかになって再び日常の娑婆世界へと生まれ変わって帰って来る事が出来るのです。
 お祖師様も身延山でご生活の折、信徒に宛てられたお手紙の中で「此の砌に望まん輩は、無始の罪障忽ちに消滅す」、則ちこの身延山に参詣したならば遠い過去世からの知らずに積んだ罪、悪業も忽ちに消えて無くなるのですよと仰せです。
 まさしくこの身延山、七面山のお参り、ご修行は生きながらにして生まれ変わる事が出来るご修行であります。私達が気付かなくとも、何度でも清らかになって初心に戻る事が出来るのが、このお山とお題目のお力なのです。皆様にはこれからも、苦しい時、悩まれた時、何度でもお祖師様の元へ、身延山に七面山にお参りされ、清らかな心と体に生まれ変わって再び日々のご生活の中でご精進を頂ければ幸いに存じます。