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育恩の峰より
奥之院思親閣別当 佐藤 順行
現世も後世も親孝行(みのぶ誌2022年8月号より)

 奥之院ではお祖師様がご両親様への追善、報恩のご供養を捧げられた霊跡である事にちなみ『父母への手紙・ありがとうの証』と題し、2種類のご祈願、ご供養を随時受け付けています。蓮の花びらを模った用紙に、ご祈願用はご存命のご両親様へ、ご供養用は亡くなられたご両親様へ感謝の言葉を綴って頂きます。こちらを夕方の勤行で別当が読み上げ、健康長寿や追善供養の祈念を申し上げています。読み上げが済んだありがとうの証は境内の納経塔へと納められます。当初はご供養がほとんどかと思っておりましたが、意外にもご存命のご両親様へ向けられたお申し込みも多くあり少々驚きました。通常の身体健全等のご祈願ではなく手紙の形式の為、ご両親様へ向けられた皆様のお気持ちが直に伝わって参ります。日頃、直接にはお伝えしにくいと思われる、お詫びや感謝、長生きを願うお言葉に、それぞれのご両親様を想われる優しさがにじみ、勤行中も心が和みます。ですが、かくいう私もそうした皆様のお仲間の一人。存命の母に孝行が出来ているか、感謝の気持ちを伝えられているかと自問しますと反省しきりであります。
 まもなく8月のお盆。今年も全国でお墓参りやお盆のご供養が行われ、多くのご先祖様がお喜び下さる事と思います。「ご供養はご先祖様への親孝行」と申しますが、一番身近なご先祖様はと考えますと、やはりご両親様であります。お祖師様はお題目、法華経の信仰を持つ事が亡き父母への孝行となると仰せであられます。また存命の父母への孝養の在り方もお示し下さっています。「親によき物を与へんと思ひて せめてする事なくば一日に二三度笑て向へと也」(建治元年 上野殿御消息)「何を出来なくとも、日に二、三度笑顔を親に見せてあげなさい」。2児の父となった私もこのお言葉の重みがようやく解り始めました。コロナ禍ではありますが一人でも多くの方の里帰りが叶い、ご両親様、ご先祖様に笑顔を見せられるお盆となりますよう願います。