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七面山別当より別当 内野 光智
秋なのですが……(みのぶ誌2021年10月号より)
 山道には幾つもの種類のキノコが顔を見せはじめ、吹き出た汗に風が当たると少し冷たく、秋の装いとなり始めた七面山です。
 本来であればこの気候の中で大勢のご信者さんがお山に集い、七面大明神に報恩の誠を捧げるため大祭を奉行するはずでありましたが、新型コロナウイルス蔓延終息の気配が見えず各地の緊急事態宣言及びまん延防止等重点措置が延期するとの見通しと、奉行することにより万が一でも医療機関の逼迫に加担することがあってはならないと、断腸の思いで大祭中止の判断を致しました。
 大祭参列を予定されていた皆様には、心よりお詫び申し上げる次第でございます。
 8月7日・8日、笑顔の給仕隊の皆さんのお力添えをいただき、廃棄物撤去最終の作業を無事に完了することができました。
 4月11日以来、何度このお山を登り駆けつけて下さったことでしょう。
 慣れない山の気候の中で何日間泥だらけになりながら危険な作業を請け負って下さったことでしょう。
 身延おてんだい(お手伝い)隊の皆さまにも助けていただき、索道麓架線場にても試行錯誤で荷下ろしをしていただきました。
 元気に作業ができるようにと各方面から飲物や手作りのおかず等々沢山の差し入れを頂戴し、どれだけ感謝の言葉を並べても間に合わない温かな気持ちを向けて下さいました。
 この間、涙腺が緩い別当は目が腫れぼったくなることが多く、泣くな、涙よ止まれ!と何度も奮闘しておりました。
 皆で索道のゴンドラを囲み廃棄物を丁寧に積込み最後の一便を見送る姿に「お葬式のお別れの時みたい」という言葉を耳にしましたが、葬儀のお別れとは全く異なるも、思わず合掌をして木々の緑のなか遥か下方に消えゆくゴンドラを見送りました。
 お力添えをいただきました沢山の皆様に篤く御礼申し上げる次第でございます。
 本当にありがとうございました。