光明照世間
七面山別当より別当 小松 祐嗣
水のごとくたいせず(みのぶ誌2025年4月号より)
 身延山の枝垂れ桜が山をピンクに染め、心弾む春真盛りでありますが、七面山はまだ冬の名残。山の木々も私達も、今か今かと春を待ち侘びています。
 いよいよ七面山別当任期も最終年の3年目となりました。昨年早々に発願いたしました「本殿基礎修復・屋根改修報恩事業」は全国各地のご寺院様方、七面山にお心お寄せ頂きます御信者様方の多大なるご助力のもと、第一期工事としての本殿檜皮屋根の葺き替え工事を終えることができました。今月中には本殿を囲んでおりました足場も外し、春の陽射しに赤く輝く真新しい姿をご覧いただけます。先ずは皆様方に御礼を兼ね、ご報告申し上げます。
 足場解体後は第二期工事として、本殿の基礎、本殿併設の古仏堂屋根の葺き替え工事が始まります。お参り頂きます皆様には引き続きご不便をおかけしますことお詫び申し上げますとともに、御浄財御寄進のご協力をお願い申し上げます。
 私が初めて七面山に勤務させて頂いたのは第116代別当代の時。別当は作業着に着替えては、朝から夕方まで外作業を毎日のようにされていました。私も敬慎院内での仕事の手が空くと、気分転換ぐらいの気持ちで外作業を手伝ったものですが、その時に別当が「時間がない時間が足りない」と仰っていたことを最近よく思い出します。
 過去3代の別当に仕え、各代、勤務が始まる初年には「全力で取り組もう」と意気揚々としていたものが、いつの間にか環境に慣れて、3年目には気が緩んでしまう。今、当時の別当方と同じ立場にあり、いよいよ3年目を迎え、当時の自身の至らなさ無責任さを、今更ながら反省する次第です。
 『あるいは火のごとく信ずる人もあり、あるいは水のごとく信ずる人もあり。〜水のごとくと申すは、いつもたいせず信ずるなり』
 やりたい事は山ほどありますが、七面大明神様にお仕えする心を大切に真摯に日々を過ごそうと思います。
 皆様のご参拝心よりお待ち申し上げます。