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七面山別当より別当 内野 光智
コロナでなくとも(みのぶ誌2020年7月号より)
 3月・4月・5月は参詣が多く大変な賑わいだと聞いておりましたが、新型コロナウイルス蔓延により人足が遠のき例年とは真逆な、聞こえてくるのは風の音、時折上空を飛び行く飛行機のごく微かなエンジン音、おそらくは七面山開闢以来の静まり返った時間ではないかと想像致しております。
 こんな時だからこそ七面大明神に御経・御題目を申し上げ御教えを請い、なぜ今がこのような状況で、どう今を乗り越えていくかを考えなければなりません。木鉦や太鼓の音で少しでも賑やかに、来山者がいれば七面山の風情に触れていただきたい等の理由から本殿や諸堂で職員が交替で読経唱題の時を過ごしております。七面山にて読経唱題の時間をこんなに確保させて頂けることは二度とない非常に貴い時間でもあります。
 一之池の周りを団扇太鼓でお題目をお唱えしながら歩くのが日課であり、凍った御池に反射する日射しに焼け、スキー焼けだと嘘自慢をしていました。真白で綺麗な氷の御池も春の訪れと共に溶け、日に日に気温が上がり水が緑色になる姿に、七面大明神がお住まいになられる最も大事な場所であるのにと胸が痛みます。
 私達が、誰か訪ねてきても部屋が散らかっていれば見られたくないように、七面大明神も現状のお住まいを見てほしくないのか、もしコロナウイルスが無くとも違った形で今と変わらない状態になったのではないか、と思案します。
 御池をきれいな元の状態に戻したいと考えておりましたところ、浄化槽が老朽化し浄化処理能力は国が定める基準に満たず「不適格」の判定を下されました。新設を余儀なくし、また御池の状態と浄化槽に少なからず関連があることから経済が下降一途のなか甚だ恐縮ながら皆さまにご協力をお願い致しますこと何卒ご容赦頂きたく切にお願い申し上げます。
 尚、万全な浄化槽ができると10年かかるかもしれませんが澄んだ元のきれいな御池に戻れるそうです。