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七面山別当より別当 長谷川 寛清
登れば分かるパワースポット(みのぶ誌2010年7月号より)
 4月1日に別当を拝命してより毎月6キロの参道を登り降りする生活です。先日は下山途中、大阪のご寺院一行とお会いしました。「もう、あと少しですか」と汗びっしょりの檀信徒の方に尋ねられ「まだまだここは7丁です」と答えるのは誠に申し訳がありませんでした。ご承知の通り、七面山は50丁に及ぶ山道なのです。しばらくすると、ご住職がニコニコしながら登って来られました。どうやら檀信徒の方々に詳しい説明をしていないようです。知識が優先の現代では、足が大変だとか時間がとれないとか、七面山を表面的に説明すれば、登らない理由はいかようにも出来ることでしょう。登れば分かるのだと言いたげに、最後尾のご住職は、皆を激励して登っていかれました。
 この3ヶ月間思うことは、見知らぬ人と人とがこんなに出会える場所はないということです。特に参道では、多くの人々が自然と心を許し、自分の思うこと、心配なこと、境遇までも語り合いながら登ってこられます。日常ではひた隠しにして、人に知られてはいけないと思うような自分自身の弱みまでも、七面大明神がさらけだす勇気を与えてくれるのでしょう。
 ある月参りの方がおっしゃいました。「7丁で、もうすぐ頂上と思うのも無理はないよ。普通は10合目が頂上だから。でも七面山は人間50年と言われた寿命の時代、50丁の道を、自分の人生に重ね合わせて登ってきた山なんだよ」
 別当として、篤信の方々に教わるばかりの毎日です。自分の人生を生きているかのように、縁ある多くの方々と出会い、今後の人生を乗り越えていけるパワーと自信を頂けるしくみが七面山の登山にはあるのだと分かります。霊峰富士を仰ぎ、ご来光を受け、法華経の守護神に迎えられる七面山は、有数のパワースポットとして、知識優先の時代だからこそ、登れば分かる価値があるのです。