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育恩の峰より
奥之院思親閣別当 町田 英昭
別当退任ご挨拶(みのぶ誌2020年2月号より)

 平成29年4月、第53代別当に就任してより早いもので間もなく3年の任期を迎えます。任期中、宗祖大孝の想いを顕現すると共に、宗祖育恩の聖地の護持に精進する旨を吐露しましたが、評価に値する成果も無く今は自省の思いでその任を辞します。
 さて某国に「無理に功績を残そうとすると独善的になり、指導者としての素養を失う」と言う先師の言葉が有るそうです。地位や立場を得ると、人は自己顕示欲に走り功業を残したいと思うのは世の常ですが、功績とは一朝一夕に為し得るものでは無く、不断の正しい努力の結果です。
 諺に「親の背を見て子は育つ」と有りますが、物事の分別、善悪が分からない小さな子供は、親の行動から物事を学びます。親の一挙手一投足が子供の人生に反映され、子供は親の行動を良く映しているので「子は親の鏡」と言われる所以です。
 子供が親から多大な影響を受けるように、人生を暗中模索する私たちは会社では上司が手本であり、また信仰の場では教師が鏡となります。私たちの立ち居振る舞いを見れば、上司や教師また指導者の考え方や品性の程が窺い知れるので、人生の訓戒と言えます。
 日蓮聖人は「仏法は体の如し、世間は影の如し。体曲れば影ななめなり(諸経与法華経難易事)」と教えられ、指導者の言動が世間に投影して、その愚痴無知が世上を乱すと御教示されました。
 思親閣別当は、日蓮大聖人の御教えの啓蒙と運営の任に在りますが、大きな業績に囚われる事なく、読経、法話、写経、唱題修行等を通じて奥之院信奉者の模範、垂訓として影が斜めにならぬように内意だけは「親は子の鏡」に向け精進して参りました。
 任期3年中、別当を支えて下さった職員ならびに関係各機関、惜しみない御厚情を賜りました御信徒の皆様方に、誌面をお借りして厚く御礼申し上げ、皆様の愈々のご多幸を祈念して擱筆します。

合掌