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育恩の峰より
奥之院思親閣別当 望月 海俊
東風解凍 ―春風凍りをとく―(みのぶ誌2016年2月号より)

 陰陽五行思想では、春の気は木。東の字は、木立の間から陽が昇る姿を示すそうです。まだ、身延山山頂は厳しい寒さの中にありますが、杉木立に差し込む陽光に少しずつぬくもりも覚えます。
 そして、大聖人が在山中「酒は石のように、鍋釜も凍って割れた」とのご様子に、当時は今以上に春の訪れを待ち焦がれていたであろうと拝察しております。
 さて、この15日は釈尊涅槃会。16日は大聖人ご生誕会であることは、皆様ご承知の通りです。では、14日はいかがでしょう。巷ではバレンタインデーと認知されていて、頂くチョコレートに一喜一憂される方もおられると思います。なかには、「俺は、チョコより猪口だ」と、とぼける御仁もいらっしゃることでしょう。
 閑話休題。大聖人御母遠忌正当年。皆様のお心を賜り、報恩浄行「母への手紙」の円成に向け諸般進捗中であります。この浄行を進める中、時として、大聖人のお父様のことを質問されます。先程14日を話題にしましたのは、実は正嘉2年2月14日が、御尊父・妙日尊儀のご命日であるからです。当院に於いても謹んで報恩ご回向を致すところです。(ちなみに、平成19年が750遠忌でした)
 大聖人が常々、夫と妻の役割と支え合いを尊んでおられましたとおり、自ら登詣供養の孝心を表されたなかにも、男女の分け隔てがないのは言わずもがなです。当院の事業が妙蓮尊尼に向いている最中、あらためて御尊父のご恩も思わずにはいられません。
 又、当院には江戸時代に孝子との誉れ高い、元政上人御尊父のお墓があります。万治2年(1659)京都から79歳の母の願いをかなえるためにその手を引き登詣、埋骨されたものです。その元政上人もこの18日が命日。
 日々の勤行をしつつ、時代が変わろうとも、この峰の思親育恩の風光が変わらないことを尊く感じております。

合掌