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育恩の峰より
奥之院思親閣別当 池上 玄裕
継続は力(みのぶ誌2011年10月号より)

 7月19日の大相撲7月場所10日目琴欧洲戦の敗北を最後に現役引退を表明した大相撲大関魁皇関におかれましては本当にお疲れ様でした。5日目には旭天鵬と対戦、得意の右上手を取り、寄り切りで白星をあげ、ついに通算1046勝で単独1位となり7日目の安美錦戦で寄り倒して通算1047勝を挙げましたが、これが現役最後の白星となりました。
 魁皇関は久遠寺の節分の顔で大関見たさの参拝者も多くおりました。その大関が震災後岩手県に行き避難所で中学生の相撲部の部員とした会話が印象に残ってます。
 魁皇関は精いっぱいの心を中学生に伝えました。床に座って4人の相撲部員と膝を交えて始まった授業。「きつい時はどうやって対処していますか」の問いに「ひまを作らない。先のことは考えない。とにかく今に集中するようにしている」。約30分間で繰り返した言葉は 「気持ちで負けてはいけない。負けなければ必ず前に進める」。言葉には復興への思いが感じられました。津波で壊滅的な被害を受けた大槌町、がれきに埋め尽くされた灰色の町に魁皇関は 「何も考えられない」と絶句したそうです。被災地に来るまでは「何ができるのか」と迷いもあったそうです。「でも、今は違う。ここに来て皆さんが笑顔で接してくれた。それだけでも何かできたのかなと思う。この思いをつなげないといけない」。
 この言葉は我々にも充分受け入れられる言葉として心に残りました。
 残念ながら引退してしまいましたが元魁皇関の「継続は力」は日々の努力が肝心であると感じとれました。そして信仰も日々の積み重ねが大事と改めて思いました。
 数々の大記録を打ち立てた魁皇関の勇姿が見られないのは残念ですが年寄浅香山としても是非頑張って欲しいと思います。そして弟子とともに又身延山へも来て欲しいとも願っています。ご苦労様でした。