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育恩の峰より
奥之院思親閣別当 望月 海俊
法華経を信ずる人は冬のごとし(みのぶ誌2017年2月号より)

 平成29年の新春を迎え、早1か月が過ぎました。皆様におかれましては、穏やかな新年をお過ごしになられた事と拝察致します。
 さて、思親閣においては昨年11月に季節外れの積雪があって以来、本年に入ってからは積雪がなく、比較的温暖な日々が続いておりますが、「みのぶ誌」が皆様のお手元に届く頃には例年の如く、20センチ程の積雪となり、境内は真白な世界に包まれていると思われます。しかし、この雪の下では、小さな植物達が、春の日の訪れを待ち、厳しい冬の季節に耐えて、土中の栄養分を少しずつ蓄え育っております。つまり「苦」を乗り越えようとしているわけです。
 私達も、この「苦」が当り前の娑婆の世界に生きる者として、日々大小の苦難を乗り越えようと致します。そして、この苦を乗り越える事によって、人として成長していくのです。初めから「苦」のない世界(浄土)に生まれて来たのでは、人としての成長もないのです。
 実は、この事柄こそが、私達が信仰する『妙法蓮華経』に顕わされているのです。「妙法」とは、漢和辞典で調べますと、「最も優れた教え」と表記されております。従いまして直訳致しますと「最も優れた教え蓮華の経え」となるわけです。では「蓮華の経え」とは何かと申しますと。蓮華の花というのは、きれいな水には生息いたしません。濁った泥の中でしか花を咲かせません。しかも、その泥の中から一切逃げようとせず、むしろそれを栄養分として、それでいて泥の色の花を咲かす蓮華は1本もないのです。
 大聖人が妙一尼御前御消息に記された「法華経を信ずる人は冬のごとし、冬は必ず春となる」の御文章の真意は、ここに顕わされているのです。
 とかく厳しい寒さが続くこの時期ですが、身体的な栄養を蓄えると共に、心の栄養もしっかりと蓄える時としたいものです。

合掌

追記 新年の初祈願等受付中。思親閣迄。