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育恩の峰より
奥之院思親閣別当 池上 玄裕
龍口御法難会(みのぶ誌2013年10月号より)

 ここ奥之院思親閣の大祭は毎年9月12日の午前11時より、久遠寺から総務様がお登りになられ奉行される龍口御法難会の事です。今年もこの秋一番の快晴の中、久遠寺井上瑞雄総務様が大導師をお勤めになられ、脇導師に身延山一老職十如坊御住職榊原是晃僧正、そして私の2人、式衆には山内支院各聖6名に御出仕頂き奉行されました。また法要に先立ち午前10時からは身延山高校教頭高橋智恂先生の御法話が約40分間ございました。
 今年で御法難会は743回目であります。この法難は、文永8年(1271)日蓮聖人御年50歳の9月12日の夕刻、鎌倉幕府側が松葉谷の草庵を急襲し、日蓮聖人を召し捕り、その夜由比が浜で日蓮聖人を斬首しようとした大変大きな法難であります。
 その年は今年(平成25年)のように春から日照り続きで雨が少なく、大変困って幕府が極楽寺の良観上人に雨乞いの祈祷を依頼しましたが、日蓮聖人は「効果は無し」と批判しました。言ったとおり効果は無かったのでしたが、批判した事が世に広まり、日蓮聖人を憎む者が増えてきました。日蓮聖人はかねてより他宗の僧と公の場にて法論をしたいと幕府に申していましたが、相手方も日蓮と法論をしても恐らく勝ち目はない、それなら別なる手段で圧迫しようと他宗の僧侶の意見が合致しました。
 相手方は日蓮は他宗の僧侶に対して無法な事を言いふらしている、つまり法華経を信じない僧侶は地獄に落ちている事、鎌倉の多くの寺は間違った教えを説いている事。良観、道隆という方々を死刑にせよと言っている事等、多くの世の人達を不安がらせていると幕府側に訴えたのであります。そこから日蓮聖人は9月12日に逮捕、そして龍口の刑場にて処刑という話でしたが、諸天善~とお題目のお力で、人生最大の危機から逃れたというお話であります。