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育恩の峰より
奥之院思親閣別当 池上 玄裕
啐啄同時(みのぶ誌2012年6月号より)

 山頂の桜も5月の黄金週間終了後より咲き始めました。4月の思親閣は例年になく寒い月で、ようやく春が来たと感じられます。
 4月下旬より全国放送のテレビで佐渡の朱鷺の卵が孵化し、雛が親鳥からえさをもらっている姿が放映されました。国内での朱鷺の孵化は、30数年ぶりの事だと大きなニュースになっております。佐渡は日蓮聖人と大変縁が深い場所ですので、より一層の期待がありますし、日蓮聖人も朱鷺を見ていたのではと勝手な想像をしております。
 「啐啄同時」という言葉があります。
 親鳥は一定期間卵を温め、孵化する頃、卵の殻を外からつつき卵を割り始めます。つつき始めるタイミングと同時に殻の中から雛も卵の殻をつつき始め、そのタイミングが合わないと雛は死んでしまうと言われてます。
 親鳥、雛双方絶妙に合わなければならない事が大切で、人に物事を教える側のタイミングと、また教えを受ける側の心のタイミングが合わなければならないとの言葉であります。
 以前、テレビで人間の出産の陣痛は母親側ではなく、胎児の脳がへその緒を通して子宮に伝え、「そろそろ出ていくよ準備して下さい」と胎児側から知らせる事や、胎内では胎児が羊水を自ら飲んで浄化をしている事、出産と同時に大きな産声を発して、今までとは全く違う呼吸方法に変化する事等、我々人間を含め大自然の生命の神秘とは本当に素晴らしいもの、かけがえの無いものを改めて実感させられます。
 以前より問題視され懸念されている事に、幼児虐待問題があります。生後数か月の乳幼児から小学校高学年の児童に渡るまで食事を与えない、背中にたばこの火を付ける、数日に渡る暴力等、子供に対して躾と称し暴力、イジメの問題も終わることがありません。
 動物、鳥でさえ親子の繋がりがあるのにと考えさせられます。