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育恩の峰より
奥之院思親閣別当 池上 玄裕
罹災の浜にて(みのぶ誌2011年8月号より)

 この度の東日本大震災により被災されたかたがたに、心より御見舞申しあげます。被災地の一日も早い復興を育恩の峰身延山奥之院思親閣よりお祈り申しあげます。
 早いもので3月の大震災より4ヶ月半が経ちました。被災地も夏を迎え新たな試練が増えた事と思います。
 先般6月21日、22日と短いながら宮城県塩竈市、多賀城市、名取市と震災の地に行ってきました。本来ならばもっと早くに行きたいと思ってましたが4月1日より思親閣に登りましたので時間が合いませんでした。
 東北自動車道仙台南インターより仙台南部道路へ進みしばらく走ると道路の右側と左側では天国と地獄の差があると聞き、右側を見てると確かに家に電気がついてないのでこれは津波に襲われた地区だなと思い合掌しホテルに向かいました。そのホテルの付近も津波が襲ってきた地区で、まだ舟が港の上に上がっておりテレビで見た光景でした。翌日塩竃市のお寺で私の関係者のお婆様の納骨法要があり参列させていただきましたがやはりお寺も屋根、壁、墓石等に被害を受けておりました。式終了後仙台市内へ移動すると、今度は津波で流されたたくさんの車が山と積んであり心の隅には夢であって欲しいという希望が完全に砕かれました。そして希望であった浜に向かうと基礎だけの地、人気のない校舎、破壊された体育館、品物の無いコンビニ等ここで多くの命が一瞬で消えたのかと思うと言葉が出てきません。浜の側に百ケ日忌のお題目の卒塔婆が建っておりその場所を借り御回向を申しあげさせていただきました。
 名取市の知人が未だ行方不明です、一日も早く見つかって欲しい事、そして東北地方に一日も早く春が来て下さいと強い思いでお祈りし帰路につきました。

合掌